天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

 橘に憧れを抱く男子は多くいても、彼女に気負わずつきまとえる男子はやはり彼女と同じ、周囲に一目を置かれていて、なおかつ実績に裏づけられた自信みなぎるタイプばかりだった。

 橘に声をかけている男子のことごとくが目映い輝きを放射して、その多くが容姿に優れていたのを覚えている。



 どうして、俺なんだろう……。



 何度となく思った疑問を今再びかんがえる。



 ……わかるはずもないけれど。


 和也はページをめくり、やがて写真のページが終わると、後半、各クラスごとの文集部分に突入した。


 "わたしの夢"というありふれたテーマで、やりたいことや願いなどをめいめいに綴った綿雲型の枠が並ぶ。


 ちなみに和也はというと、野球選手、とこっぱずかしいほど枠一杯に書いている。


 赤面しつつ橘小百合を探すと、そこには……、


(なんだ、これ)


 なりたい職業でも、叶えたい願望でもない、あまりに抽象的すぎる一文が綴られていた。




 わたしだけの幸せ




 気になって中学の方も開いてみる。
 確か書いたはずと思ってページをめくると、やっぱりあった。




 幸せ




 中学に至ってはそれだけだった。


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