天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
「小百合は笹原くんじゃないよ」
告白を賭けた件のゲームを、まだ蒸し返すつもりらしい。
これを、沼岡は言いたかったのだろう。俺に対する関心など、ちょっとした野次馬程度で……。
「気の毒だけどさ」
笹原は、いまだ隙あらばと機会を窺っているようだが、なかなかうまく行かないのか、かつての男らしい勢いは日に日に衰えを見せ始めている。
二人きりになる機会がないのは、すなわち諦めろ、諦めて別の女を探せという、神さまからの慰めだと捉えた方がいいのかもしれない……
などと悲観的な科白を、近頃はよくぼやいている。
運命に逆らっても好きならとことん戦いに行けよ、
さだめなんてつまんねぇもんおまえの手でひっくり返してみろよ、
それが気概だろと、
以前までの俺なら暑苦しいほど激励したにちがいない。
が、今は―――……。
満身創痍になるまで笹原が自らの恋心を貫いたとしたら、
……俺に、勝ち目はあるだろうか。
我が身のあくどさ、せこさに情けなくなるけれど……
(橘はこんな俺も丸ごと好きでいてくれるって―――)
言う。
「そう、なんだ……」
「あんな派手な罰ゲームして、そっち、大丈夫なの? いまさらだけど」