天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

 和也は黙して語らず、踵を返した。

 待ってよ、と沼岡が追いかけてくる。


「小百合も大変なの。あんなふうに大勢の前で告白されたから、笹原くんの気持ちを汲んで、自分は好きな人に告白もできないって」

「それ、橘が言ったの?」

「わたしが感じてることだけど?」

「………そう」


 なおも沼岡は追いかけてくる。


「小百合一途だからさぁ、叶えてあげたいの、どうしても」



 一途―――。



「……笹原を好きになる可能性は1%もないの?」



 己の心に怯えと期待とが見え隠れする。

 沼岡は気の毒そうな顔を浮かべたが、首を振り、表情をあらためるとちょっと怖いくらいの眼差しで断言した。




「小百合に限って移り気とか、ありえない」



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