天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
こういうときはあいつだろうと、和也は翌日、さっそく滝に相談を持ちかけた。
おごるからと言って誘い出し、男2人、色気の欠片もなくフードコートで向かい合う。
「何でも注文OK」だと勘違いしてついてきた滝は、上限150円の(それでも和也には断腸の破格!)設定に不平を垂れ、それでもしっかり吟味してからアメリカンドッグを注文した。
ちなみに俺はただ(無料)の水。
決断しながらも女々しくいろいろ思い惑い、それら諸々を水とともに押し込んで、和也は腹を括った。
当初の約束をすっかり忘れ、何だかんだ言いながら一心不乱にアメリカンドッグにかぶりつく男に、なあと、和也はついに切り出した。
「絶対に振り向いてくれなさそうな子に告白されたら、どうする?」
「………………はぁ?」
溜めに溜め、滝はケチャップのついた口をひん曲げて裏返った声を上げた。
「なんだよそれ、告られたのか」
「ちがうよ。ちょっとな。いいから答えろよ。滝ならどうする?」
余計な詮索をされる前に早口でまくし立てる。
滝は不審そうに和也を見つつ、そうだな、と思案げにアゴに触れた。
「何か、思惑とか、謀(はかりごと)を疑うんじゃねぇか?」
首を傾げながらそう言って、やおら滝は眼鏡を外し、水を飲んだ。
おもわく? はかりごと?
今まで頭をちらりとも過ぎらなかった不穏な言葉に、和也はどきりとして目を開ける。
「イノ、おまえが言いたいのは多分、絶対自分とは釣り合いが取れないだろっていう相手に言われたらってことだろ?
それは優等生に対する不良とかの差じゃなくて、見た目のよさとか格とか、周りからの評価とかそんなん」
「そう!」
和也は前のめりになる。
「凡人に対する傑物っていうか、取り柄のないちょいデブとサッカー部のエースみたいな」