天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
「真逆の相手からいきなりだろ? 振り向いてもらえないってことは自分はそいつより明らかに下手だと思ってる。
うん。やっぱ俺は喜悦より怖さが先に立つかな」
「どうして?」
「だって怪しいだろフツーに。ありっこないやつからのアプローチなんて。そりゃあ? 一時は誇らしく思えるかもしんねぇよ、けど、よくよく考えたらおっかねぇよ」
ふいに、ぼとりと落ちたケチャップを二人で見つめる。
―――三通りあるだろう、と滝は抑揚のない口ぶりで言った。
「本気か、ゲーム―――俺たちが笹原にやらせたようなやつな、遊びってこともある」
「最後のひとつは?」
「何かよからぬ企みがある」
「ドラマの見過ぎだろ」
ことさら軽口のように和也は言った。
が、どうしてだろう、心臓はかなりうるさく鼓動を刻んでいる。
……企み? ……怪しい?
「ないとは言い切れない」
「高校生だぞ?」
「そうなのか?」
素朴な声で聞き返され、あっ、と和也は口を押さえる。
己の迂闊さに泣く。
学習しないやつめ……!
呻く粗忽者の友を暫しのあいだ黙って見つめていた滝だが、そのうち、まあいいけど、とわりにあっさり手許のアメリカンドッグに目線を戻した。
一瞬、俺を気遣ってくれたのかと思ったけれど、彼のアメリカンドッグへと注がれる眼差しは熱い。
彼の関心は、はじめから和也の相談などよりよほど食欲なのだろう。
「高校生だからって侮れないだろ? もういっぱしに知恵がついてる歳なんだから。
本気出せば大人顔負けに周到殺人ができるやつだって、うちの学校にも何人いるか」