天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
こういうことには第三者の意見があったほうがいいんだ、と力強く言う滝にはもはや言い訳は通じない様子だ。
「このあいだ、幸せがどうこう言ってたけど……まさか行き遅れた年増女とかじゃないだろうな? それともあの強かそうな生徒会副会長? ああダメダメ、そんなの絶対ダメだぞ!」
滝の眼差しは突き抜けて真摯そのもの。
こいつになら……、と心が揺れたその瞬間。
「あれー、どうしたのこんなとこで。二人でデート?」
(!?)
笹原が、何の前触れもなく現れた。
(な、なんでこんなとこに……)
「それとも勉強会―――」
……もうすぐ期末試験ではある。
はなから諦めている俺や、そもそも試験のための勉強をしない優秀児滝とちがって、笹原は試験前には逆算で予定を組み、それに従ってこつこつ励む熱心な生徒のはずだ。
とっくに家に帰ったと思って滝を家に呼ばなかったのに、それがまさかこんなところで遊んでいるなんて……。
「……ではないっぽいけど」
笹原は苦笑した。
挟んだ二人のテーブルの上には教科書はおろかシャーペンの一本すら出ていない。
和也は力なく笑って、まあ、そんなとこ、と頭を掻く。
目を合わせられなくて、視線は自然、アメリカンドッグの棒に注がれる。
最近、笹原とは以前のよう、気を置かずに話せなくなっている自分がいた。
まして今は心の箍が外れかけ、危うく橘の名前を出そうとしていた。
滝よ……、どうか今だけは余計なことを聞いてくれるなと、和也は胸の内で激しく願う。
「笹原は? 帰る前に軽く腹ごなし?」
和也の祈りが通じたのか、滝は、深刻な話し合いがなされていたとは露ほども悟らせぬおだやかな素振りで問い返した。