天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠
頬杖をついて、もはやわかりきっていることを意地悪く訊いてくる彼女に、ただ答えるだけじゃおもしろくないと、和也にしてはめずらしく挑戦的な意思が芽生えた。
「なんで俺が好きなの?」
「好きだからよ」
彼女はいつだって一枚上手である……。
「……答えになってない」
「世界で一番魅力的よ」
「世界中の男を見てきたわけじゃないじゃん」
「見なくてもわかるわ」
「じゃあ、どうして魅力的って思ったか、訊いてもいい?」
橘はちょっと逡巡するように視線を斜め下に落として、
「あなたのおかげで、人を好きになる気持ちを取り戻せた―――だからかな」
目を細め、彼女はそう言った。
「そんな大それたこと、俺したか?」
「気づいていないことがあなたの何よりの美点よ。知らず知らずに誰かを救ってるの。それってとても素敵なこと。だからね」
嫉妬するわ、みんなに優しいから―――。
それが本当に悔しそうな響きで和也はまたすこし惚けてしまった。
そんなふうに思ってくれる人がいるんだ。
それからちょっとくすぐったい気持ちになって、そわそわしながら和也は訊いた。
「ど、独占したい……?」
彼女は言った。
「もう何年も前からね」