天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

「笹原くんには、悪いと思ってるけど、わたし、好きな人がいて……
 ずっと、ずっと前から好きな人で、だから、笹原くんの想いには、応えられない……」


 予想だにしない告白に、一瞬、目の前がまっ暗になった。


「…………そ、なんだ」


 ならばあのとき恥ずかしそうに見せたのは、両想いにおどろいて血が上ったからではなく、

 単なる、告白というものに対する上気……だったということか。


(うわぁ、うっそぉ……やば……マジかあぁぁー)


 内心で呻きながら和也は、膝からその場に崩れそうになるのをなんとか堪える。

 笹原に悪いことしちまったなぁ……。

 一か八かって感はあったけど、まさかそう来るとは。

 苦いものでもあやまって口にしてしまったように、和也の顔がじわじわ歪んでいく。


「―――話はまだ終わってない」

「え……―――あ、はっ、はい」


 つい敬語になって、和也は背筋を伸ばした。

 一緒に顔を上げてぎょっとした。


「なっ、なんで泣いてんだよ!」


 見れば、はらはらと、天使の目から雫が溢れているではないか。

 弾かれたように和也は駆け寄る。

 が、寄ったはいいが、泣き出した理由がわからないのでは、言葉のかけようがないと、和也は途方に暮れる。

 慰める気の利いた科白なんて浮かばない……。

 可憐な泣き顔を前におろおろと無様な格好を晒すばかりである。


「ど、どうしたんだよ……そ、そんなに俺らにされたことがいやだったのか? だったら謝るから。
 土下座でもなんでもするよ。なぁ、だから泣かないでくれよ、なぁって……」

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