星月夜のマーメイド
駅前のコンビニにバイトの面接に行こうと自転車に乗った光輝は、途中ふと小さな看板が目に付いた。
『中本町図書館はこちら→』
(図書館か…こんな所にあったんだ。)
元々本を読むことが好きだった光輝は、面接の時間までまだ余裕があることを確認し、立ち寄ってみることにした。
自動ドアから中へ入ると、昔懐かしい本特有のにおいがした。
建物は区民センターに併設され、駅に割と近いせいか想像以上に人の出入りがあった。
光輝は奥にある文庫コーナーの棚をぐるっと周った。
そこで1冊の本に目が留まった。
(お、これ読みたかった本だ。)
その本を取ると、早速受付カウンターに持っていった。
「初めてなんですけど。」
受付の後ろにある返却本を整理していた女性に声をかけると、女性はパッと前を向いて光輝の顔を見た。
(………うそ)