星月夜のマーメイド
「脚立邪魔でしたね。お怪我されていませんか?」
心配顔で倒れた光輝の横に跪いた。
「全然大丈夫です!」と興奮気味に言いながら、慌てて散乱した本を片付けた。
「本当に迷惑かけてスミマセンでした。」
彼女は申し訳なさそうにお辞儀をした。
「俺、まだこの図書館に通い慣れていないせいか余所見してしまって。仕事の邪魔してごめんなさい。」
「いえ、謝るのはこちらの方です。でも怪我されていなくてよかったです。」
ニコッと微笑んだ彼女は、脚立をたたんで部屋の奥に立てかけた。
チラッと名札の名前を確認すると、『佐々木』と明記されていた。
彼女は「それではごゆっくり。」と言いながら、たくさんの本を持って1階に降りようとした。
「佐々木さん!」
光輝は無意識に彼女を呼び止めてしまった。
「あ、いや、あの、スミマセン。名札に名前があったから。」
彼女は不思議そうに光輝を見ていたので、急に緊張してしまった。
「それ、俺が持ちます!」
キョトンとした顔をした彼女の腕から、半ば強引に持っていた本を奪ってしまった。
「そんな、大丈夫です。仕事ですから…」
「いや、先程ご迷惑おかけしたのでこれくらい…」
「ゴホン、お静かに。」
先程から騒がしくしていたから、側にいた年配者に注意されてしまった。
「「スミマセン…。」」
その場を収める為、光輝が本を持ったまま1一階に降りた。