星月夜のマーメイド




「あーっ、もう駄目だ!どうにかなりそう…。」


参考書を閉じてその上に突っ伏したのは、親友・清水史也。


二人は今、ギラギラと輝く真夏の日差しを完全にシャットアウトして、野郎の汗臭い部屋で黙々と塾の課題をやっつけている所だった。


「ったく、うるせーよ。」


「お前はいいよなー。苦労しなくても“お勉強”出来るんだから。」


そう言いながら史也はゴロンと寝転んだ。


「…勝手に言ってろ。」



相田光輝は高校3年生の夏を、楽しく満喫することなく受験勉強に没頭していた。


史也は仰向けのまま、ニョキニョキと体をくねらせ、光輝の横に移動した。


「で、光輝は結局大学どこにすんの?」


「…まだ決めてない。」


「カーッ!!出たよ。決められないほどたくさん候補があるってことじゃねーか!」


光輝はクルクルと回していたシャーペンを参考書に置いて、史也の横に寝転んだ。


「ってかさ、大学なんてどこでも同じでしょ?」


「…お前相変わらず冷めてんな。」


光輝はその意味がよく理解出来なかった。


(冷めてるわけじゃなくて、冷静に判断してんだけどね。)


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