星月夜のマーメイド


まっすぐ家に帰りたくなかった。


足は自然と図書館へ向かっていた。


しかし図書館に足を踏み入れるのも躊躇してしまった。


皆に会って何を言えばいいんだ。


顔を見ただけで何があったかうすうす感ずかれてしまうほどのおばさんたち。


お説教されるか?それとも愚痴るか?


それも馬鹿げているとせっかく来た図書館に入らず、隣の公園のベンチに腰を下ろした。


しばらくすると、隣にスッと影ができた。


「あれ?光輝君、今日バイトだったっけ?」


「いや、今日休みですよ。昨日休みだよね?ってエレンさん言ってたじゃないですか。」


相変わらず笑顔で天然な事を言うエレンに、気持ちが少しずつ落ち着くのを感じた


「うふふ、思い出した。」笑いながらエレンは急に真面目な顔をして光輝を見つめた。


「何だか元気ないね。何かあった?」


「まぁ、あった…かな?」


「どうした?」


ふんわりと自然な声に、ついついバイト先であった事を愚痴ってしまった。





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