星月夜のマーメイド
「そっか、それは光輝君大変だったね。悔しいね。」
「エレンさん…。」
「社会に出ると理不尽な事ってたくさんあるよね。でも光輝君偉かったよ!」
「どこが?たくさんダメだしされたのに。」
「だって店長さんにたて突かなかったんでしょ?我慢して謝ったもの。」
光輝は新鮮だった。
今までの人生でこんなにも自分を認めてくれる人がいただろうか。
「まぁ、少しは自分にも非があるとは思ったんで。」
「で、バイト辞めようなんて思ってない?。」
(…エレンさん、天然だけど鋭いです。)
「辞めるのは簡単だと思う。でもここからが光輝君の正念場だよ。逃げちゃだめ。」
エレンがいつになく真剣な眼差しで見つめた。
「人間だから失敗もある。理不尽なことでうまくいかないこともある。
そういう中で光輝君がこれからどうしていくことが、自分の成長につながると思う?」
「うーん、今までそんな事考えたことなかったから…。」
嫌なことがあれば辞めればいいと。
嫌なことは全部無視してきた。
「光輝君が誠心誠意尽くして頑張れば、必ず自分に返ってくるし、その職場の為になるのかなって私は思うの。」
ふと考えた。
確かに自分がやったことではない事で理不尽に攻められた。
関係ない過去のミスまでネチネチ注意された。
こんな上司のもとで我慢するのもばからしい。
でも…。
自分がやっていない事だからって無視することでもない。
過去のミスだって今にもつながる事だ。
どこか自分のエゴで店長の話を聞き入れられなかったのではないか。