星月夜のマーメイド
そんな風に感じる光輝にエレンは頷いた。
「店長さん、もしかしたら光輝君に期待しているのかも。」
「…え?」
「もし光輝君がその時のお客様の立場なら、どうしてほしい?」
「そうだな、まずは誰でもいいから真剣に思いを汲んでほしいかな…。」
「だよね?光輝君は悪くないけど、時にはまず相手を尊重しなければいけないときもあるんだよね。」
「なんか俺、格好悪いな…。」
光輝は頭をクシャクシャにして大きく溜め息をついた。
「格好悪くなんてないよ!だって今こうして悩んで前に進もうとしてるでしょ?最高に格好いいよ!」
光輝は顔を真っ赤にして空を見上げた。
(頼むよー。グッとくるじゃねーか…。)
「俺、バイト戻るわ。今日の事をまず店長に謝るよ。」
「頑張って!光輝君。」
ニコニコ笑って手を振ってくれたその姿に、光輝は体の底から感動して身震いした。
今まで人を励ましたり、励まされたりなんてあったかな。
(結構良いもんだな…。)
あれだけ重たかった体が軽くなったような気がした。