星月夜のマーメイド




夏休みに入ってしばらくすると、史也が光輝の家に転がり込んできた。


「大事な夏休みにこんなところにいて大丈夫なのか?俺バイトあるしかまってやれないぞ。」


「もう光輝君ったら。今年は遊びませんよ。わかってますって。去年の二の舞は踏みませんよ。」


「じゃぁ何でここにいるの?」


ニタニタと史也が薄ら笑いを浮かべる。


「東京に来て何かあったでしょ?」


「いや別に。…何で?」


「それを確かめたら帰るから。」


「何だよ、それ。」


「お前が言わないといつまでもいるぞ!あぁ、今年駄目になったのは光輝君のせいだ~って泣くぞ。」


光輝はチラッと史也を見てため息をついた。


「…何が言いたい?」


「…いや、何か丸くなったっていうか…。」


「太ったかな?」


「そーいう事じゃなくって…」


光輝はケラケラと笑いながら史也の鼻をつまんだ。


「冗談だよ。」


史也は光輝の顔をじーっと見つめた。


「断然こっちの光輝の方がいいよ。」


史也に改めて言われた光輝は、ちょっと照れながら笑った。


「…さんきゅ。」


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