星月夜のマーメイド
図星だったのか、黙り込んでしまった。
後悔した。
土足で踏み込んでしまったのだろうか?
すると、思いもかけない言葉がエレンから聞こえてきた。
「光輝君、案外鋭いね。」
「…えっ?」
まさかそんな答えが来ると思っていなかったので、エレンの目をじっと見て固まってしまった。
「ふふふ、冗談。何でもないよ。」
1人焦りまくる光輝を余所に、エレンはすくっと立ち上がった。
「じゃあ光輝君、またね。」
エレンは手を振りながら、図書館の方へ歩き始めた。
(あんな姿して、何でもないわけないじゃん。)
あの海辺で出会った時と同じように、切なそうな背中のエレンだった。