星月夜のマーメイド
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9月に入っても、暑い日が続いた。
格好のリゾート日和だと、新幹線の座席の横に座る史也は興奮していた。
光輝は連休の分の課題をやっつけておこうと、徹夜で勉強し今日を迎えていた。
「…俺寝るわ。」
「なーに言ってんの?目的地に行くまでがまず楽しいんじゃねーかって、おい、起きろ!何で徹夜したんだよ!真面目か!」
(真面目で悪かったな。)
そう、俺は真面目なんだ。
親に反抗したこともない。
ただひたすらに“いい大学”と言われるところを目指して頑張ってきた。
何が悪い。そんなもんだろ人生なんて。
いい大学に入れば何とかいい人生ってもんが送れるんだろ、って本当は思ってもいない事を自分に言い聞かせてんだ。
この先を考えるのが面倒くさいからやってるだけなんて、親は思ってもいないないんだろうな。
馬鹿な親だ。
光輝は何となく頭の中でぐるぐると考えながら、いつの間にか本当に寝てしまっていた。
起きた時に見た史也のテンションの低さに、申し訳なかったとの思い以上にウケてしまった。
「小学生かっ!」