星月夜のマーメイド
「エレンちゃん、愛媛の実家に帰るって。」
「えっ?」
「光輝君はもちろん知ってるんでしょ?ダンナさんの話。」
「はい、全部じゃないと思いますけど。」
「彼女、最初から実家に帰るつもりでいたのよ。ただ踏ん切りつかなくて…。
でもやっと決めたって、昨夜電話もらったのよ。」
「昨夜…。」
「エレンちゃん、光輝君がいてくれて本当に良かったって。」
「それ、俺に直接言って欲しかったよ…。」
「言えないわよー。」
バシンと思い切り背中を叩かれて、ウーロン茶をこぼしてしまった。
(中島さん…。相当酔ってるな…。)
「あなたはまだ若いからわからないと思うけど、結婚って相当重たいものなのよ。だから、簡単に別れられなかった訳でしょう?」
「そりゃ少しはわかりますよ…。でも…」
「いくらあなたが『守ります』って言ったって、そんなあまちゃんにこれからの人生押しつける事なんて出来やしないわ。」
中島の話に光輝はハッとした。
「彼女はきっと、あなたの事が大切だと思ったから、かえってすがることが出来なかったのよ。」
中島の言う通りだ。
守るって簡単に言ったけど、今の俺に何が出来るんだ。
何もかも中途半端で。
彼女を守れる位の男にならなきゃ、何の意味もない。