星月夜のマーメイド
「気持ちいい―!!」
やっとの事で島に着いた。
相変わらずテンションの高い史也と比べ、光輝はぐったりしていた。
新幹線で下車した後もローカル線に揺られ、その後はフェリーに乗ったためすっかり疲れてしまった。
しかし島からみる景色は光輝の疲労を一瞬で吹き飛ばした。
瀬戸内海に浮かぶ緑あふれる大小様々な島々。
透明度の高いキラキラと光る水面。
どれも光輝にとっての現実からかけ離れていて、凍てつく心を癒してくれそうだ。
「せっかくだから、満喫しますか。」
「そうこなくちゃ、光輝君!」
二人は夜の食事まで、島一周のサイクリングを体験した。
島の高台にある展望台に着いた時には、すっかり夕方になっていた。
夕焼けがこんなに綺麗だったなんて。
光輝も史也も無言で広い海原をただ見つめていた。
しばらくするとポンポンと音が鳴り、島内放送が流れた。
どうやら日が暮れると明かりがほとんどないらしい。
二人は慌ててホテルに戻った。