星月夜のマーメイド
私の名前は、浜岡愛恋【はまおかえれん】。
…でも、今はまだ【佐々木】という苗字。
「エレンちゃん、彼がいるんだね~。」
ビールを飲みながら、中島さんは私の左薬指を見て嬉しそうに笑った。
「あの…私、結婚しているんです。」
「えっ?そうなの?若いのにエライわねー。」
中島さんは驚いた顔をしながら、焼き鳥をモグモグと食べた。
「今はまだ…なんですけど…ね。」
今まで殆ど語ったことがなかった自分の事。
大学の友達ですら知らない話。
何故だろう…。
何故、中島さんにそんな話しちゃってるんだろう…。
中島さんが年上だから?
中島さんが結婚しているから?
ううん、本当は誰かに聞いてもらいたかったのかな、私。
そんな事を思い浮かべながら中島さんの顔を見たけれど、滲んで顔がよく見えない。
あれ?私、泣いてるんだ。