星月夜のマーメイド
島の朝は早く、ホテルに泊まっていた人達も散歩に繰り出したり、釣りやサイクリングをしていた。
砂浜まで来ると、子供達がしゃがんで何かしていた。
聞くと貝を拾っているという。
「俺も拾っちゃおうかなー。」
史也がそう言ってズカズカと砂浜を歩きだした。
光輝は砂浜へと続く階段に座り、海の向こうに浮かぶ島々をじっと見ていた。
(こんな大自然に比べたら、俺なんてちっぽけだよな…)
そんな事を思っていた光輝の背後に、足音が聞こえた。
ゆっくりと振り向くと、一人で歩く女性がいた。
(幻でも夢でもなかった…)
昨夜見かけたマーメイド。
服こそ違っていたものの、確かに彼女だった。
光輝の目は彼女の後ろ姿を追っていた。
何なんだろう、この感覚。
惹きつけられる。
光輝の頭の中は、この日からしばらくマーメイドで一杯になった。