52歳のホワイトデー
「これ、斉藤さんに差し上げます」
そう言うと、遠藤さんは伊勢丹の小さな包みを差し出した。
「新年会の景品で余った物ですけど、
斉藤さん、使って下さい」
「そんな…!
いただけません!」
「斉藤さん、一番頑張ってくれたので…」
遠藤さんは少し強引にその包みを私にくれた。
そして、また走って戻って行ってしまった。
私は慌てて
「すいませんでしたー」
と遠藤さんの背中に向かって叫んだ。
遠藤さんは振り向いて、小さく手を振った。