トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
この学校の職員室は、教員全員が集まる大部屋と、教科や役職に応じて個室がある。


朝礼や会議の時は大部屋を使うが、大抵の呼び出しは個室で済ませる。


今回私が赴くのも個室の方だ。


職員室は教室から離れた所にあるので、一度に運ぼうとしたのだけれど。


思ったよりも重かった。


もう手の感覚がなくなってきたし。


早く届けないと大変なことに……。



「キャッ!」


「っ!」



なんてことを考えてた矢先。

曲がり角に差し掛かっていて、ちょうど向かってきた人とぶつかる。



目の前で、山ほど積み上げたノートやプリントが散った。



あー…………。

やっちゃった。



宙を舞うプリントの隙間から、髪や制服を乱した女生徒がすれ違ってくのが見えた。


ぱさりと最後の一枚が落ちた頃には、女生徒の姿は見えなくなっていた。



尋常じゃない慌てぶりに、格好。


あれは誰かに襲われたかな。



取り敢えず廊下に散ったものを拾おう。


腰を下ろした時、近くの戸が開いた音がした。



「ちっ……逃げられたか」



聞こえた声は、私が不本意ながら会いに行こうとした担任のもので。



「たいした顔じゃないくせに、俺に逆らってんじゃねえよ」



私は眉間にシワが寄るのを感じた。


彼は廊下の惨状に気付くことなく、逆の方へ去る。


この隙に散らばったものを拾い集め、主人のいない個室に入る。

ノックなんてしない。


プリント、ノートを机に置いて、死角にボイスレコーダーを仕込む。
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