トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
彼の性格からして、無駄に整った顔を活かして次の獲物を調達することだろう。


あのゲス、近いうちに教育委員会に突き出してやる。



さて。


用は済んだ。

あの子はどこに行ったのかな。



ああいう時は人気の無い所に行くものだから……。


特別教室の集まる棟に行く。

すると、いつもお世話になっている女子トイレからすすり泣く声がした。



当たり。




足音をたてないよう、近づく。


戸の前に立ち、それを叩こうとして、止めた。




私は今、彼女になんて声をかけようとした?




ここで神様やってた時は、向こうから話を聞けと来た。


だから聞いたし、話した。


来る人は皆、神様に話を聞いて欲しい人ばかりだったからだ。


だが、この子はどうだ。

話を聞いてもらいに、誰かに話したくてここに来たのか。


一人になりたくて、だから、人目を避けてここに逃げ込んだんじゃないの?




私は、持ち上げたままの拳を降ろした。



今、私に出来ることは何もない。



来た時同様、足音を立てないようにトイレを出る。




走り出したい衝動を必死に抑え、静かにここを離れた。





私は、無力だ。
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