トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
音は立てず、足早に廊下を過ぎる。


十分に離れると、やりきれない想いをぶつけるように壁を殴った。


ビクともしない。

………痛い。


指の背が赤くなっている。

握り締めていた拳を開くと、手のひらにはうっすら血が出ていた。



私、何のために神様やってるんだっけ。



壁に背を預け、漠然と思う。



初めは、ただの野次馬だった。


女子トイレに居を構えてから、神様と呼ばれるようになり。



……調子に乗っていたようです。




周りに何と思われようと、私はただの一学生に過ぎない。


なりたくとも、神様のような、大それた存在にはなれないのだから。




遠くから部活に勤しむ声が聞こえて、現実に引き戻された。





帰ろう。





下駄箱に行こうとして、気づいた。


カバン、教室だ。



たいしたものは入っていないけど、置いとくわけにもいかないし。



私は進行方向を下駄箱から教室に変更した。
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