トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「付き合えたら、いくら巻き上げられるかな?」
「お前らも行けよ」
「俺たちは浪瀬には敵わないからな」
「浪瀬大明神様お恵みをー」
だから、2か月前から付きまとわれるようになったのね。
馬が合うのかもしれないと思った。
浪瀬と過ごす時間は、結構楽しかったのに、な。
痛む胸を押さえ、戸に額を付ける。
真実を知ってしまった以上、このままではいられない。
何も知らないふりして接することができるほど、私は器用じゃない。
始めてしまったものは、終わらせなければ。
やり方は簡単。
私が浪瀬に告白するだけだ。
さすれば、この関係は終わる。
頭ではわかっているのに。
戸にかけた手に力が入ってくれない。
情報収集の邪魔されることも、特攻かけられることも無くなる。
解放されるのに、どうして動けない。
浪瀬とその仲間たちががたがたと動き出し、帰り支度を始める。
私は咄嗟に隣の教室に隠れた。
「経過は逐一報告しろよ」
「隠し事はなしだからな」
「わかってるよ」
足音と話し声が遠くなるのを、息を殺して聞いた。
それが完全になくなっても、しばらくその場を動けなかった。