トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
静かに息を吸って。
「私と別れてください」
「………………はぁ?」
たっぷり間を空けて、間の抜けた声をあげる浪瀬。
ま、普通はそうなりますよねぇ。
先程告白したばかりだというのに、もう別れようなんて。
何のために告白したのか。
「お前、俺の心をもてあそんだのか!」
「あんたが言うセリフじゃないでしょうが!」
過去幾度となく女を泣かせてきた奴の言う台詞じゃない。
「ま、そういうわけだから。貴様はとっととお仲間の下に帰れば?」
最後に、これまでにないくらいの笑顔を作って。
「今までつき合わせて、ごめんなさい」
返事を聞かず、私は校舎裏をスキップしながら去った。
鼻歌なんて歌ったりしちゃって。
学校が見えなくなるくらい離れてから、足を止める。
神様は要らなくなった。
浪瀬と係わる理由もなくなった。
これでいい。
心にぽっかり空いた穴を誤魔化すように、全力疾走で帰路についた。