トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
* * *
というわけで、開会宣言から数時間後。
予想通り、我ら窓際族は店番を押し付けられ。
そして私は、射的の島を任された。
椅子に座って客を待ち、来たら割り箸製鉄砲と輪ゴムを渡すだけの楽な係。
この教室には他に、くじ引きとボーリングもどきが設置されている。
もちろん、うちのクラスの出し物はこれだけではない。
「キャー!!」
隣の教室から女子たちの黄色い悲鳴があがった。
そこには私のクラスから、輪投げ、ダーツ、ヨーヨーすくいが展開されている。
あちらは大人気のご様子で。
こちらは閑古鳥が鳴いていて。
同じクラスだというのに、この差は何だろう。
まぁいいですけど。
暇を持て余した私は、割り箸製の銃に輪ゴムを引っ掛け、的に当てた。
ふっ………。
なんか楽しい。
暇なのをいいことに何度か撃っていると。
「よぉ」
振り返らなくても判る。
「どーも」
銃に輪ゴムをセットしながら、おざなりに返す。
的に狙いを定めて、トリガーに指をかけようとした瞬間。
背中が重くなり、銃を持つ手に手が重なる。
あ、と思うより先に、重ねられた手によってトリガーが引かれた。
発射された輪ゴムは、引き寄せられるように的に当たる。
瞬間、割り箸製銃を掠め取られた。
それを目で追い振り向くと、そこには銃口の煙を吹く浪瀬。
もちろん、割り箸輪ゴム製で煙など出ませんよ。
一種の例えです。
「惚れたか?」
「バカか」
いくら流し目で格好つけても。
割り箸製のちゃちな鉄砲が、全てを台無しにしていた。