トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「………で、何の用です?」
「交代の時間が来たから、迎えに来た」
「キャー!!」
浪瀬につられて来たのだろう女生徒どもが悲鳴をあげた。
君たち、何にそんなに反応した。
周りを見ると、閑古鳥鳴いていた教室にはギャラリーがいっぱい。
これが、浪瀬パワー。
イケメン爆ぜろ。
てか、もう交代の時間が来ましたかー。
私はにこりと微笑んで、浪瀬に向き直った。
「お迎え感謝するわ。でも……」
今ここで浪瀬と行動を共にする訳にはいかない理由がある。
「ごめんなさい、交代の方が来るまでここを抜けるわけにはいかないのです」
てのは建前で、本音は浪瀬と文化祭を回った暁には、明日の朝日は拝めないであろうことが容易に想像できたから。
見てごらんよ、ギラギラした女子たちの目!!
私みたいな弱者は一瞬でお陀仏よ。
「あんたのファンの皆様方と楽しんでらっしゃいな」
私はここから一歩も動かないわ。
と、店番用に置いてある椅子にどつかり腰掛ける。
だが、そんな私の些細な反抗などものともせずに。
浪瀬は私の手首を掴み、無理矢理立たせた。
なにこの捕獲された犯罪者の気分………。
「んじゃ、こいつもらってくわ。交代の奴見つけたら声かけとくし」
彼はくじ引きとボーリングの店番をしているクラスメートに声をかけ、颯爽と教室をあとにした。
野次馬の大半を引き連れて………。
店番メンバーはキラキラした目で浪瀬の背中を見送った。
元中心人物筆頭、校内5指のイケメン浪瀬忍の言うことなら聞いてくれるかもしれない。
今、彼は我ら窓際族の希望の星だ。
私という、罪なき一般生徒を連行していることを除けばね!