トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
暫くそうした後、浪瀬が離れる。
その顔はいつもの嫌味なものだった。
瞬間、悟った。
あ。
私、騙されたわ。
「俺様の勝ちだ」
「何の勝負ですか」
「何って、俺様がお前をオトせるかの勝負に決まってんだろ」
「はぁ? それはもう終わったんじゃ………」
第一、勝負の相手も居ないでしょうに。
「あんな告白ノーカンだ! てなわけで、俺様をあいつらに勝たせたきゃ、俺と付き合え」
誰との勝負よ、誰との。
「当時のお仲間さんと手を切った今、バツゲームは無効のはずだけれども」
「言ったよな、お前が好きだって」
「さっきから言ってる事矛盾してますよね。結局のところ、バツゲームなんですか、本命なんですか、どっちなんですか」
「バツゲームの相手が本命になった。それだけだ」
「………思うに、貴様も人の事言えませんよね。そんな告白の仕方がありますか」
「お互い様だろう?」
てか、バツゲームって事知ってたんだな。
流石カミサマ。
などと、浪瀬が笑う。
「だけど、俺の感情の変化には気づかなかったようだな」
「………私はただの野次馬ですから」
「告白の返事は今は聞かない。よく考えてから答えをくれ」
そういう訳だから、今は食え。
浪瀬が屋台で買ったものたちを差し出してくれる。
食べ物に罪はない。
私達は無言でそれをつつき、次から次へと来る告白シーンを見続けていた。