トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
荷物を全部持って、人に不審に思われないよう動く。
向かった先は、1階にある校舎裏に近い女子トイレ。
この時間は、ただひとつの理由を除いて人通りがまったくないところ。
一番奥の個室に入って鍵を閉める。
荷物は扉にひっかけ、便器の上に座った。
私立のトイレは臭くも汚くもなく、それなりに快適です。
カバンの中から教科書を取り出して、今日の復習をする。
2、3回ページをめくったところで、足音が近づいてきた。
ぱたんと教科書を閉じて、カバンに入れ、小さく咳払いをする。
今からここで何をするのか。
『カのつく自由業』と、私は呼んでいます。
それは、この時間に人が来る、ただひとつの理由。
「トイレの神様、いらっしゃいますか?」
「どうかしたのか、迷える子羊よ」
運が良ければ現れるという、“トイレの神様”に会うためである。