トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐




荷物を全部持って、人に不審に思われないよう動く。



向かった先は、1階にある校舎裏に近い女子トイレ。


この時間は、ただひとつの理由を除いて人通りがまったくないところ。




一番奥の個室に入って鍵を閉める。



荷物は扉にひっかけ、便器の上に座った。



私立のトイレは臭くも汚くもなく、それなりに快適です。




カバンの中から教科書を取り出して、今日の復習をする。


2、3回ページをめくったところで、足音が近づいてきた。



ぱたんと教科書を閉じて、カバンに入れ、小さく咳払いをする。







今からここで何をするのか。


『カのつく自由業』と、私は呼んでいます。







それは、この時間に人が来る、ただひとつの理由。







「トイレの神様、いらっしゃいますか?」




「どうかしたのか、迷える子羊よ」




運が良ければ現れるという、“トイレの神様”に会うためである。





< 16 / 252 >

この作品をシェア

pagetop