トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「寝たふりだってことは分かってるんだから! とっととあたしについて来なさい! じゃないと痛い目にあうんだから!」
ガンガン机を揺らされて、耳元でキンキン叫ばれて。
周りの視線は痛いしで、充分痛い目に遭っているのですが。
でもそれ以上に、彼女について行くとよろしくないことが起きるのは火を見るよりも明らかなわけで。
寝たふりを続けた。
教師が来るまで耐えれば私の勝ちです。
人の目が多い中、何かしら仕掛けてくるようなバカではないでしょうし。
何かあったとしても、こんなに目撃者がいるのですから、私は無罪な被害者と証言してくれるはず。
なのに。
「あんた、忍の何?」
「ぶっ!!」
公衆の面前での爆弾投下に肩を揺らしてしまう。
「あんたが文化祭中、彼女面してべったりしてて、浪瀬君が迷惑してたのがわからなかったの?」
「あんたみたいなブスより、あたしの方が忍にお似合いなんだから、邪魔しないで!」
立て続けに言われても、寝たふりを続ける。
てか、1日目の変装の意味は?
あんなに頑張った浪瀬忍の本命恋人アピールを差し置いて、2日目引き摺り回された私が叩かれるなんて、おかしくないですか?
なーんて、反論しても余計騒ぎになるだけでしょうし。
浪瀬に関わるとろくなことがないわ。
ったく、面倒くさい。
早く教師来い、と念を送っていると。
「朝から楽しそうだな」
やってきたのは教師でなく、話題の中心人物、浪瀬忍。
この際貴様でもいい。
私の彼女疑惑を否定してくれ………。