トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
彼はこの事実に、言葉を失っているようだった。
「………いかがするか。そなたが望むならば、学校や警察に言えばよい」
「…………いえ」
彼ははっきりした声音で言ってのける。
「彼女……古賀さんがお金目当てだったとしても、僕は幸せでした」
ほんとに、過去を懐かしむような幸せそうな声でした。
「勝手に信じて、勝手に裏切られた気になって。僕は、彼女を責める気はありません。……お世話になりました」
そう言って、扉を開ける彼を呼び止める。
「ひとつ伺いたい。そなたはまだ、古賀瑞穂に貢ぐのか」
「………僕は、お金のからまない友人を作りたいと思っています」
「……左様か」
扉を開けて出て行った彼を、今度は止めない。