トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
席について授業を受けながら、クラスメート越しの浪瀬の背中を見やる。
普段どおりに見えるけど、頭の中は多種多様な戦略を練っていることでしょう。
私に譲る気は毛頭無いし、きっと彼も引かない。
これは私と浪瀬の勝負。
どっちが早く、犯人を見つけることができるか。
本物のトイレの神様として、情報戦で負けるわけにはいきませんよ。
さて。
私も作戦を練らないと。
といっても、やる事は普段と変わらない。
重要なのは場所。
私の得意とする情報収集は、噂ばなしから。
タイミングよく核心に触れる話を出してもらわないといけない。
話しやすい場所はどこかしら。
この授業が終われば、あとは帰るだけ。
となると、部活動に勤しむ者、教室に残る者、遊びに行く者、寄り道もせず帰る者。
だめだ。
ターゲットが絞れない。
数打ちゃ当たるの戦法で、人の多い方について行くしかないか。
方針を固めた放課後。
しばらく教室に残ろうと思ったけど、浪瀬がいたから他教室をうろうろする。
しかし、トイレの神様情報漏洩について話すグループはなかった。
その代わり。
「わたし、神様に叶えてもらったよ」
「神様が秘密漏らしたなんて、何かの間違いじゃないかな」
「神様を騙るなんて許せない!」
ぽつぽつと、神様を擁護する声が上がっていた。
信じてくれる人がいるって、嬉しいことですね。
俄然やる気がでますわ。
浪瀬になんか負けてらんない。
見切りをつけて、下駄箱付近で張り込む。
いちばん人の多い時を狙って学校を出た。
少しでも生徒の行く方向へ。
足を向けていたわけだけど、何も得られなかった。
今日は運がなかったみたいだ。
モノがモノなだけに、ロスが痛い。