トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐




飛び跳ねる勢いでそれに手をのばしたが、ひょいと遠くに逃げられた。



それでも諦めずに追い続け、ようやく手の内に戻った時。




「お前は餌に飛び掛かる犬か」




後ろから聞こえた声にぎくりとした。




しまった、相棒を取り返すのに必死で、周りを見てませんでした。




冷静になって考えれば、デジカメがひとりでに飛び出して飛び回るなんてありえないでしょう。




私の目の前には、出口の扉。



あ、逃げたい。




「お前他になに持ってんの? うわっ、俺ばっか。しかも全部隠し撮りじゃねぇか。……こん時のも、よく撮れたな」




逃走計画を練っている間に、奴は私のカバンをあさりだしたらしい。



訴えますよ。



でも、写真という証拠がある以上、別の罪で私が負けますからしませんけど。




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