トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
私には、胡散臭い顔にしか見えませんけどね。
揚げ足をとってみよう。
「へぇ。じゃあ私はかわいい女の子なの」
「んなわけねぇだろブス。カバンの中を見せてもらった。顔が悪い生徒手帳が入ってたし」
「貴様……」
「お前がいろんな奴のストーカーしてるって、言いまわってもいいんだぜ?」
浪瀬忍は勝ち誇ったように鼻を鳴らす。
「だったら私は、放送室を乗っ取って、これを流そうかしら」
私はケータイを操作して、音楽ファイルを再生する。
『せんせ、いいだろ?』
『もう、仕方ないわね。誰にも内緒よ』
『もちろん』
『……はい、これ次の試験の問題。5教科ともあるわ』
『サンキュ』
流れたのは、浪瀬と、今は産休をとっている女性教員の声。
1学期中間テスト前の会話。
「他にもいろいろあるけど」
「マジでお前、何者……。ストーカーじゃねぇの?」
「いいえ」
少し考えてから、思いつくままの答えを返した。
「ただの野次馬です」