トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「お前の言った事、本当だった」
「は?」
昼休み、告白スポットの校舎裏で鉢合わせた浪瀬の第一声がそれだった。
何の事だ。
「朝、トイレでふたりになったとき、聞いてみたんだわ。アイツ、モデルと付き合ってた」
「なに本人に聞いちゃってるんですか!」
それはきっと、朝すれ違ったあの時。
こんな事になるなら、あの時浪瀬を止めておけばよかった。
「しゃべるなと言ったのを忘れたか、このアホ」
思わずはき捨てるように口に出す。
「何か言ったか」
「なーんにもっ」
「安心しろよ、冗談で言ってみたってごまかした」
ごまかせばいいってもんじゃないでしょう。
過ぎた事をぐちぐち言っても仕方ないですけど。
はあー、と大げさにため息をつく。
私は回れ右をして歩き出す。
行くところは決まっていない。
「おい、どこ行くんだ」
少し後ろを浪瀬がついてきた。
反応したら負けだと、歩く速さを上げる。
今後絶対に、何があっても。
浪瀬に情報は渡すまいと心に決めた。