トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「あの、よく分からないのですが、簡単に言うと、マネージャーは僕のことどう思っているんでしょうか」
純粋な子だわ。
いまどきの高校男子にしては天然記念物モノの純粋さ。
気をつけないと、そこらへんの野蛮な狼においしくいただかれ………ごほん。
「えと、マネージャーはあなたたち全員を見守っています。そこに彼女の恋愛感情は微塵もありません」
部員たちの恋愛事情を妄想しているのですから。
「そう、ですか……」
「ほら、めげずにいい人を探しましょう! マネージャーよりいい人なんて大勢います。少なくとも、男子バスケ部マネージャーのような人を選ばないことをお勧めします」
だまされやすそうで純粋な彼に、トイレの神様からのアドバイス。
「ありがとうございます。俺、片山先輩のような人を探します!」
「ぶっ!」
ありがとうございました、と軽い足取りで去っていく相談者。
その遠くなる足音を聞きながら私はもだえていた。
あの時、じゃあその先輩とつきあっちゃいなよ!
とか思った私バカ!
思いっきり、昨日のアレに洗脳されているじゃないか!
忘れろ、忘れなさい私、あれは人生の汚点んん!!
今日ほど、無駄にいい記憶力を恨んだ日はない。
ひとまずそれを記憶の奥底に封じ込められたのは、何時間も先のこと。