トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「捨て置けばいいのに、どうして拾ってきたのよ」
「お前は鬼か! 健気に俺様の後をついてくるこいつを見て見ぬフリはできないだろうが!」
「猫はさすらうものです。気まぐれな生き物です。恩を知らぬ生き物です」
「それはお前の偏見だろう」
「たまたま向かう先が一緒だったのでしょう、通学中の生徒のように。それを、後をついて来ていると言うとは、勘違いも甚だしい」
「勘違いじゃねぇし。だったら今、俺様の腕の中でおとなしくしているコイツをどう説明するんだ」
「………」
私と猫の視線が交差する。
少しの間のにらめっこ。
「……ただのメンクイと見た。貴様の顔は猫にもウケるようです。よかったねー」
「バカにしてんだろ!」
「まさか」
物陰から出て、校舎のほうに足を向ける。
追ってくる浪瀬。
勘違いはしないで欲しい。