トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「最近では、ブランド物の財布とか鞄を買ってあげたら、次の日別れるとか言い出したり、女子トークの自慢話に使われたりで散々だ……」
彼の声色には、つかれたのだとありありとでていた。
「今日もたまたまひとりでいた時告白されて、返事は後でいいからって逃げられて……」
私は相槌をうつ。
「断りづらいってのもあるけど、あの人はなんか大丈夫な気がしたから付き合ってみようと思う」
ここには決意表明をしにきたのかな。
頑張ってください、と応援しますよ。
「俺に告るとき、緊張でか声が上ずってたし、顔真っ赤だったし、純情そうで、今までの人とは違う気がしたし。………でも、実は前みたいな人かもしれないし……」
………なにこれ。
うじうじうじうじはっきりしないですね。
爽やかで明るい、なんと言うか、完璧なイケメンって感じだったのに、本性はこんなだったなんて。
直感に任せて、潔く決めればいいのよ。
と、言いたいところなんだけど、竹中麻晶の彼女暦を知っていると、そうも言えなくなるなぁ。
「竹中麻晶、君は僕にどうして欲しい」
「かみさま……?」
「直感に任せていけばいいとでも言えばいいのか、怖いなら断ればいいと言えばいいのか」
「違います! 俺はただ、彼女がどんな人なのか知りたいだけ。昔付き合ってた人と同じじゃないって確信したいだけだ!」
必死に訴えかける声。
彼は、一度懐に入れた人を無条件で信じきってしまう癖がある。
人を疑ったり、非難するのを嫌うため、無意識にそうしてしまうのだろう。