トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
おさげに黒縁めがね。
本好きで図書委員になったという、なんのひねりもない先輩。
………失礼。
まぁ、そんな先輩に話しかけるような人はいない。
独りで寂しそうに見えなくもないけど、同じ図書委員として言わせてもらえば、他に煩わされること無く本を読めて、幸せいっぱいに違いないね。
あまりしゃべらない人だけれど、本のことになれば、人が変わったようにしゃべりだすから。
廊下の人通りが少なくなり、時計を見ると、もうすぐ次の授業が始まる時間になっていた。
近くのグループも解散しはじめたので、ちらりと北村美友紀先輩を見てから引き上げる。
本の残りページは5分の1くらいだった。
予想はしてたことだけど、大した収穫はなかったな、残念。
自分の教室に戻るべく、人のいない階段を上がる。
「おい」
踊り場に差し掛かったところで、最近聞きなれた声に呼びとめられた。
振り返らなくてもわかる。
「なんでお前ここにいんの? ストーカーの帰りか?」
アイツはニヤニヤ顔をしている。
「そういう貴様はどうなんですかー」
私は、むっとして挑発するように問う。