トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「俺様は上のトイレが混んでたから下に行っただけだぜ。お前と違ってな」
「…………」
「何だよその目! アイドルはトイレに行かないとか本気で思ってんのか」
「いや、想像がつかないだけですよ」
ってか、自分のことをアイドルとか。
クラスの人気者ってのは否定できないが。
「といいますか、人のトイレ想像するとか、変態ですか」
「まあ、確かに」
ひとしきり苦い顔をしてから、浪瀬は思い出したように口を開いた。
「今日はいつにも増して楽しそうだな」
「あ、わかります? もうほんっと、今まで耐えてきて良かったって感じ!」
昨日のことを思い出すだけで頬が緩む。
「何のこと行ってるかわかんねぇけど、その顔キメェ。すぐやめろ」
「俺様何様忍様が全額払うんなら、整形してやってもいいわよ」
「ふざけんな!」
調子に乗ってたら、浪瀬のアホに脳天に一発もらいました。
でも今は気分がいいから。
「そんなムキにならないでくださいよ、ただの冗談じゃないですか」
菩薩のように広い心を持った今の私は笑って流せます。
いつもの私なら、強引に振り払ったでしょうけど。