トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
はっとして、わたしは逃げるように電車を降りる。
開いたままのドアから見える車内。
彼はわたしを見たまま、口を動かした。
声は聞こえなかったけど、伝わってきた。
ドアが閉まると、彼はアイドルスマイルじゃない、綺麗な笑顔で手を振ってくれた。
わたしも手を振り返す。
すぐに彼の姿は見えなくなったけれど、電車が見えなくなるまで手を振り続けた。
「明日からもまた、会えるんだ……」
声に出して、ようやく現実味をもった出来事。
また、変わらない朝がやって来る。
ふと、変声期前の男の子の声を思い出した。
「もしかして、あの子が神様だったのかな………。ありがとう、わたしは今幸せです!」
天に居るであろう神様を見上げ、わたしは思いの丈を叫んだ。