トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐



「えっと、テスト範囲なら……」



「ちっ、分かれよ」




親切に教えてあげようとした人に対するこの仕打ち。




「だまらっしゃい! 熟年夫婦じゃあるまいし『あれとって』で通じるわけないでしょ!」




当然、理不尽だと抗議した。




「大体、人を呼び出しといて、用件はそれ? くだらない」



帰る。

と、行動で示せば、頭をガシッと掴まれた。



「くだらなくねぇよ。俺様には重要な問題だ」




どんどん強くなる頭の締め付けに、私は身悶える。




「放せっ! 私は悪事を働いて閉じ込められたサルじゃないっ」



「俺様から逃げようとしたお前は、悪いことしてないって?」



「当たり前でしょっ」



「ってっ!」




足を勢いよく後ろに蹴って、手応えを感じた。



頭の拘束が弛んだところを見計らって、浪瀬から距離をとり、悲鳴をあげるそこを両手で抱える。


大丈夫、血は出てない。




「ってーな、何しやがる!」



「こっちが何しやがるよ」




「俺様のおみ足が汚れたじゃねぇか、どう責任とってくれんだ、アァ!?」




「私だって、頭が割れる思いをしたのよ、慰謝料払ってもらおうじゃない!」




嗚呼。



きっと端から見たらバカップルかケンカップルに見えるんじゃないかと考えてしまった。


それは堪らなく不本意です。



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