キャンディ
少女と僕とキャンディの使命
 眩しい。
 あれ、もう朝かな、と僕は思い目を開けた。しかしそこにあった光景は眠っているであろう少女が光り輝いていた。そして次の瞬間、人の形をしていたものが生き物に変わったのである。その姿は女王蜂のように僕には見えた。
「リラックスしてると元の姿になっちゃうの」
 という声が僕の耳に響いた。蜜のように甘く深い声だった。そして輝きは失せ、気づけば僕は眠り、朝になっていた。
 僕は夜に起きた出来事を少女には話さなかった。そうしたほうがいいような気がしたからだ。誰にでもきかれたくないことはあるはずだ。
「昨日の場所へ行きましょ」
 彼女はそう言い、僕は少女と一緒に畑へ向った。
 なんとそこには弧を描くようにミツバチが舞っていた。僕らに気づいたのか、彼らがゆっくりとこちらにむかって飛んで来る。僕の方にというよりは少女の方に向って飛んでいた。まるで泣いている子供が母親に抱かれるように。
「この町は大丈夫そうね」
 少女はミツバチを見回しながら言った。
「そのようだね」
 僕は言った。
「他の町にも行ってミツバチを呼びもどさなきゃ」
 少女は僕の方を見た。その意味を僕は察し、
「僕も君と一緒に行っていいかな?」ときいた。彼女は、「もちろんよ」と僕の手を握りしめ別の町へ一緒に歩き出した。
 もしかしたら少女は僕ら人間たちにミツバチの重要性を認識させるために現れたのかもしれない。それだけでなく自然の重要性。複雑に絡んだ原因が僕ら人間の手で彼らの住処や生態系を壊していたのかもしれない。そしてそのことに気づいて欲しかったのかもしれない。
「これ食べる?」
 少女は僕にキャンディを差し出した。僕はうなずき、それを口に放り込んだ。
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