グッバイ・ティラミス
「そうなの!?それはめでたいね〜。」
「…うん。」
そうなの。
私が生まれた、すっごいおめでたい日なの。
先生にとっては普段の日と変わらない、なんてことない日かもしれないけれど、私にとっては大事な日で。
大事な日は、大好きな人といたいから。
…だから、
「お祝い、してください。」
結局、先生の目を見続けることはできなかった。
声もかすれかすれになって、言葉を紡ぐだけでも精一杯。
先生がなんらかのリアクションをとる前に、私は次の言葉を発する。
「一緒にティラミス食べてください。」
ーー先生は今、どんな顔をしているのかな。
困ったような顔を、しているのかな。
私を断るための口実でも考えているのかな。
…先生、ごめんね。
私、知っていて、わざと言ったんだ。
ティラミスは、中村先生の大好物だ、ってこと。
先生が、ティラミスがキライだ、ってこと。