グッバイ・ティラミス


先生がきっと、私からの誘いに戸惑うと思っていたのに。
なぜか先生ではなく、私が戸惑った目で先生をジーッと見つめることになった。



落ち着いた、丸みを帯びた声。
穏やかそうな、表情。


先生は私に誘われたことに対して、何も疑問を抱いてないみたいで。
思ってもない展開に、私の方が動揺を隠せない。



「先生、ティラミス嫌いなんじゃないの?」

「うん、あんまり好きじゃないかな。」



…そもそも、私自身が何をしたかったんだろう。

今回のことは大誤算だったけど、本来なら断られる勝算しか見えないはずなのに。それなのに、突発的に先生を困らせるような質問をしてしまった。


そういうところが、私は生徒なんだろうな。生徒でしか、ないんだろうな。


今回はなぜかオッケーが出たけど、もし断られていたら私はどうなっていたんだろう。
今回はオッケーをもらえたのに、嬉しいんだけど嬉しくないようなこの気持ちは一体なんなんだろう。



一体私は、何がしたいんだろう。



「でも、なっちゃんは好きでしょう?」




ーーやっぱり、先生が大好きだ。





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