グッバイ・ティラミス
不意打ちでこんな嬉しいこと言ってくるなんて、ずるい。このタイミングで、今まで見たことないってくらい、ニッコリ微笑んでくれるなんて、ずるい。
先生は、中村先生がいるんでしょ。中村先生としかティラミスは食べないんじゃないの。なんで私と一緒に食べてくれるの。
さっきまで戸惑っていた気持ちもサーっと引いて、途端に花が咲いたような嬉しさでいっぱいになる。
先生、ずるいよ。
「…すき。」
「でしょう?
せっかくの誕生日なんだから一緒にお祝いしようよ。」
この瞬間、先生はパソコンとかを触ったりするような流れ作業ではなく、私のことだけを見ていた。
先生の目を、私の目とちゃんと合わせてくれて。
先生はなにもすることなく、私とおしゃべりすることに集中してくれていて。
「生徒」の私ではなく、「女の子」としての私を見てくれているような気がした。
先生が初めて「望月菜摘」として、私と向き合ってくれた気がしたの。