グッバイ・ティラミス
「なっちゃん。」
先生がもう一度、私の名前を呼ぶ。
なっちゃん
先生からそう呼ばれるのが、好きだった。
先生にそう呼ばれるのが愛おしくて、恥ずかしくて。
私はいっつも、なっちゃんと呼ぶ先生の目を見ることができなかったんです。
なっちゃん
今度は先生に負けないくらいの力強い視線で、先生のことを見つめかえすよ。
「来週の金曜日、一緒にティラミス食べるの、楽しみだね。」
先生の言葉に泣きそうになりながらも、私は先生の目をジッとみて。
声を発することなく、首だけでブンブンと、うなづいてみせた。
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「…あの時食べたティラミスが、一番美味しかったなあ。」
思わず出てきたのは、ため息のような声だった。