グッバイ・ティラミス
…もし、先生に彼女さんがいたとしたら。
その事実を知った私は、どうなってしまうんだろう。
泣くのかな。
泣くこともできないくらい、無表情になるのかな。
想像できないし、想像もしたくないけれど。その可能性を考えただけで、嫉妬や不安で狂いそうになる。
だって、その声で、その腕で、彼女さんに触れるんでしょう?
彼女さんにしか見せない笑顔で、彼女さんの名前を呼ぶんでしょう?
先生の心の中の大部分を占めるであろう、いるかいないかもわからない、彼女さん。
努力なんてしなくたって、「彼女」という肩書きがあれば、先生の中では唯一無二の存在になれる。
別れたとしても、そのままずっと結ばれたとしても、「彼女」という立場に一度でもなれば、先生の中で揺るぎない存在になれる。
…そんなの、ずるい。
どんなに頑張っても私が生徒である以上、たくさんいる中の三年間のサイクルの中の一人にしかなれない私とは、大違いだ。